日本応用数理学会
2015年 研究部会連合発表会
プログラム
ver. 2015-03-07
ご注意:本プログラムは暫定版であり変更される可能性があります.
2月22日 | 数理ファイナンス(2)の講演情報が変更されました |
2月20日 | プログラム公開(午前の開始時間が 9:30 → 9:40 になりました) |
3月6日
3月7日
▷ ウェーブレット(1) [3月7日:11:10-12:30:509](座長:藤ノ木 健介,鈴木 俊夫)
- p進数体上における離散ウェーブレットについて / ○鈴木 俊夫 (筑波大学数理物質科学研究科) [概要]
代数学の数論において,p進数体が登場する.これは,有理数体に通常の絶対値とは異なるp進ノルムを導入し,完備化した空間である.本講演では,p進数体上のMRA及び離散ウェーブレットについて,具体例を紹介する.
- (60分講演) 補間を用いたウェーブレットの構成について / ○福田 尚広 (有明高専), 木下 保 (筑波大学) [概要]
近年,様々なタイプのウェーブレットが構成され,諸分野へ応用されている.
本講演では,補間という考え方を用いて様々なウェーブレットが構成できることを示し,構成したウェーブレットの持つ性質について報告する.
▷ ウェーブレット(2) [3月7日:13:30-14:50:509](座長:藤田 景子,池邊 和馬,萬代 武史)
- ウェーブレット変換とM系列を利用した音声電子透かし / ○池邊 和馬 (大阪教育大学), 辰巳 基 (大阪教育大学), 守本 晃 (大阪教育大学) [概要]
本論文では音声の可聴域に電子透かしを埋め込むことを目的とする.
ウェーブレット変換を用いて音声信号を周波数領域で解析し,
音楽によく用いられる周波数帯域を情報列とみなす.
ここから埋め込みたい情報列と一致する部分数列を検索し,
一致部分と同じ位置の他の帯域にM系列の搬送波を加算する.
これをもって電子透かしの埋め込みとする.
電子透かしの抽出は,M系列の搬送波を検出した後に
情報列とみなした帯域を解析することで可能である.
- N 分木離散ウェーブレット変換と画像分離法 / ○守本 晃 (大阪教育大学), 芦野 隆一 (大阪教育大学), 萬代 武史 (大阪電気通信大学) [概要]
画像の重ね合わせを複数枚観測する.
観測画像から,画像の枚数,重ね合わせの重みなどのパラメータを推定し
元画像に分離する逆問題を画像分離問題とよぶ.
画像分離問題に対して,N 分木離散ウェーブレット変換を用いて解法を試みる.
- 聴性定常反応計測波形の1次元定常ウェーブレット解析によるノイズ除去アルゴリズムについて / ○井川 信子 (流通経済大学), 守本 晃 (大阪教育大学), 芦野 隆一 (大阪教育大学) [概要]
本来,誘発脳波は背景脳波に埋もれた微弱な電位である.ウェアラブルコンピュータの実用化が進む今日,この誘発脳波を自然生活環境で計測する要求が高まる.様々な雑音に埋もれた反応から必要な信号を迅速に取り出すことが必須である.本稿では,計測中の波形に1次元離散定常ウェーブレット解析を用いて,必要な波形のみを取り出し加算する方法について説明する.
- 平均補間型リフティングスキームによる画像の非線形近似 / ○藤ノ木 健介 (東海大学) [概要]
平均補間に基づくリフティングスキームを用いた非分離型2次元双直交ウェーブレットを構成する.提案法ではスケーリング関数は常にHaarベースの関数となるが,ウェーブレットは補間次数に比例して任意の次数を持つ.この性質が実際の画像の非線形近似に与える影響を紹介し,従来法よりも優れた結果が得られることを示す.
▷ ウェーブレット(3) [3月7日:15:00-16:00:509](座長:福田 尚広)
- (60分講演) 任意実数ダイレーションを持つ正規直交ウェーブレット基底と周波数帯域を自由自在に設計できる正規直交ウェーブレット基底 / ○戸田 浩 (豊橋技術科学大学), 章 忠 (豊橋技術科学大学) [概要]
標題に掲げた1番目の正規直交ウェーブレット基底は,2000年代初頭に,その存在自体が否定されたものであるが,筆者らは周波数領域にコンパクトサポートを持つウェーブレットを用いて,その設計を可能にした.さらに,これを基に,各レベルの周波数帯域が自由自在に設計できるよう,発展させたものが,2番目の正規直交ウェーブレット基底である.周波数領域にコンパクトサポートを持つウェーブレットは,時間領域でコンパクトサポートを持たないため,一般的に扱いにくいウェーブレットとして敬遠されがちである.しかし,そのようなウェーブレットは有用な特徴をいくつか持っており,標題に掲げた2つの新しい正規直交ウェーブレット基底の設計を可能にしただけではなく,その計算方法までも実現可能にしている.
▷ 応用カオス(1) [3月7日:09:40-11:00:508](座長:山口 明宏)
- 可解カオスの真軌道計算とその拡散符号構成への応用 / ○津田 宏史 (京都大学工学部), 岩﨑 淳 (京都大学大学院情報学研究科), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]
本研究では,カオス真軌道を用いてスペクトル拡散通信用拡散符号を構成した.この拡散符号は,遅延がデータ1ビット程度の場合において,非同期CDMA通信でGoldとほとんど変わらないビット誤り率をもつことが確認された.また,このカオス拡散符号において重要な要素は,符号の計算精度より,カオス性を有しているかどうかという点であるということが確認された.
- Weyl列に基づくスペクトル拡散通信システムの性能評価 / ○猶原 僚也 (京都大学大学院 情報学研究科), 梅野 健 (京都大学大学院 情報学研究科) [概要]
現在の第3世代移動通信システムに用いられている擬似雑音符号や,多くの研究がなされているカオス性を持った符号とは異なるWeyl列に基づく拡散符号を用いるスペクトル拡散通信システムを提案する.この符号を用いた場合,同期通信と非同期通信の双方で既存符号を用いた通信システムより同時接続ユーザ数の増加が可能であることを計算機シミュレーション結果より報告する.また,提案符号に使用される素数の値によってコンスタレーションにできる内円の半径の大きさは変化し,2つの符号の内円の半径の大きさの差とその相互相関値には関係があることを示す.
- パワー一定カオス拡散符号を適用した衛星通信方式 / ○中澤 勇夫 (京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]
衛星通信システムでは、光衛星および無線衛星は現在も鋭意研究開発されている。次世代の安心・安全ICTを目指した衛星通信では、回線の大容量化、信頼性と共に超多重アクセスの要望も強まっている。本発表はカオス符号としてパワー一定カオス拡散符号の特徴を生かして、衛星通信方式に適用する時の諸特性とカオス符号多重時の特性を発表する。
- tangent関数を用いたシンプレクティック写像 / ○大久保 健一 (京大情報), 梅野 健 (京大情報) [概要]
力学系の特徴を分析するために, 不変測度の解析解はとても役に立つ. しかし, 一般に不変測度を求めるのは困難である.
発表者達はtangent関数を用いた新しいシンプレクティック写像を提案する. この写像の特性として, 摂動の大きさが2以上の場合には
写像の作用変数がコーシー分布に従う. 摂動の大きさが2.6の場合にsuper-diffusionが発生することが確認された.
▷ 応用カオス(2) [3月7日:11:10-12:30:508](座長:奥富 秀俊)
- GPS-TECデータの相関解析及びその巨大地震発生との関係性 / ○岩田 卓也 (京都大学工学部), 梅野 健 (京都大学情報学研究科) [概要]
本研究ではGPS衛星から得られる電離圏総電子数 (Total Electron Content, TEC) データを解析し、巨大地震発生との関係性を調べた。TEC変化を時間の多項式で近似し、予測値と実データの差を取り、さらに周囲のGPS観測局との相関を取ったところ、2011年に発生した東北沖地震において、本震の1時間程前から震源付近で異常がみられた。本手法-相関解析-を用いてTECデータをリアルタイム解析することで、大地震発生の予測の一助をなり得ることを示唆している。
- レーザーカオスと金属v溝による超集束効果を用いた高効率テラヘルツ分光装置 / ○岩尾 憲幸 (福井工業大学), 桑島 史欣 (福井工業大学) [概要]
テラヘルツ波とはおおよそ周波数が0.1THz〜10THz(0.03mm〜3mm)の周波数帯域であり、透過特性を有する最短波長の電磁波であります。そのためイメージング、高速通信、医療等の様々な応用が期待されています。20年ほど前まではテラヘルツ波は未開拓領域であった。1990年代にTHz-TDS(THz-Time Domain Spectroscopy)が発達しテラヘルツ波の発生と時間波形の観測がかのうになりました。しかし、数百万円のフェムト秒レーザーを使用するためコストの問題があります。そこで半導体レーザーを用いたMLD-THz-TDS(Multimode Laser Diode THz-TDS)が考案され、半導体レーザーが数千円程度なので安価にシステムを構築できるようになりました。だが、得られるテラヘルツ波の帯域が0.5THz以下に限られます。また半導体レーザー自体は安定だかTHz波は不安定です。本研究では、カオス発振させて、レーザースペクトルの帯域を広くし、テラヘルツ波を安定かつ広帯域で発生させます。カオス発振時と発振前を比較すると発振時は1.20THz,発振前は9.72THzと123.5倍の広がりを確認しました。また、MVG(Metal V groove waveguide)とSiレンズのTHz波のPeak-to-peakを比較するとMVGでは170(pA),Siレンズは80(pA)となり約2.1倍の検出感度の増大を確認しました。
- 新たな非線形時系列解析の手法としてのMoving Maximum Lyapunov Exponents (MMLE) / ○岡田 大樹 (京都大学大学院情報学研究科), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]
本研究において、実際の物理現象の観測などから得られる実験的な時系列からカオス的特徴を解析する手法 Moving Maximum Lyapunov Exponents (MMLE)を独自に考案した。このMMLEとは、Rosenstein (1993)らが提案した一つの時系列から一つのリアプノフ指数を得る方法を応用し、単純移動平均(Simple Moving Average)のように、一つの時系列の各時点において、直近のある一定の長さまでの部分時系列からリアプノフ指数を計算し、時系列全体におけるリアプノフ指数の遷移を見る手法である。株価の変動や、人間の脳波などの実験的な時系列がカオス的であるという報告が多くの研究者により報告されているが、これらの複雑なシステムに依る時系列の持つ決定論的性質は時間によって変動していると思われる。そこで、このMMLEによる解析により、リアプノフ指数の正確な計算をするにあたって障壁となる決定論的性質の変化を感知することができ、その意味で、より正確な解析が行えると期待できる。本研究においては、既にカオス的であると知られているLorentz方程式をある時点でそのパラメータを変えてその決定論的性質を変化させて生成した時系列をMMLEを用いて解析したところ、その決定論的性質の変化を感知し、またリアプノフ指数は理論値に十分に近いものを取ったことが確認された。
- Primitive Chaosについて / ○小笠原 義仁 (早稲田大学), 根城 均 (山梨大学), Artem Trifonov (Lomonosov Moscow State University) [概要]
近年、発表者によりprimitive chaosと呼ばれる概念が提案された。このprimitive chaosに幾つか条件を付け加える事により、カオス的性質が現れてくる様子を見る事が出来る。そして、このprimitive chaosの存在を保証する条件を探求する事により、nondegenerate Peano continuumやCantor setといった概念が現れてくる様子を見る事が出来る。本報では、そこで得られた知見を元にして実在の現象について議論する。
[参考文献]
J. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 15002; 80 (2011) 67002; 81 (2012) 103001; 83 (2014) 1401.
▷ 応用カオス(3) [3月7日:13:30-14:50:508](座長:後藤 振一郎)
- ヒトのミラーニューロンシステムの脳波解析とカオス注入同期システムとの関係について / ○新谷 健 (京都大学工学部), 梅野 健 (京都大学情報学研究科) [概要]
ヒトの脳には、他人の行動の意図や感情を理解する際に、ミラーニューロンシステム(MNS)が働いていると言われている。本研究では、MNSに関して脳波測定実験を行い、その脳波データを解析した結果を述べる。また現在、MNSを記述する数理モデルは少なく、MNSをカオスシステムの同期現象と仮定してカオス注入同期システムを提案した。本研究におけるモデルに関してはMNSをマクロなセンサー入力システムとして捉え、カオスシステムの同期を用いるシンプルなモデルを2つ挙げた。その際、システムの同期非同期性を数値計算と解析により明らかにした。
- カオス的セルラーニューラルネットワークにおける画像入力に対する同期応答の解析 / ○藤原 正幸 (福岡工業大学), 山口 明宏 (福岡工業大学), 久保 正男 (防衛大学校) [概要]
カオス的スパイク応答を示す神経細胞モデルを要素として構成した2次元のセルラーニューラルネットワークについて,グレースケール画像を入力した場合の応答を自己相関および相互相関を用いて解析した結果を報告する.
- カオスダイナミクスを用いた粘菌アメーバ型SAT解探索アルゴリズムの高速化 / ○原 裕介 (京都大学工学部), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]
充足可能性問題(Satisfiability Problem;SAT)は、解探索が非常に困難な、NP-完全問題に属する。
青野氏が提案する、粘菌アメーバから着想を得たSAT解探索アルゴリズム、「AmoebaSAT」は非常に高い性能を示し、従来最速といわれるWalkSATを上回る速さで3-SATの厳密解にたどり着くことが確認された。
本研究では、AmoebaSATの生物的揺らぎを表現する変数更新式を、別の更新式に置き換えることで、アルゴリズムの性能の変化を観察した。
カオスダイナミクスの観点とAmoebaSATの特徴を考慮した変更を加えた結果、青野氏が提案するAmoebaSATがより少ない計算ステップ数で3-SATの解に到達することを実現した。
- カオス理論に基づくメタヒューリスティックアルゴリズムについて / ○長崎 大都 (京都大学大学院情報学研究科), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]
ヒューリスティックなアルゴリズムに、ルベーグスペクトラムフィルタ及び負の自己相関特性をもつカオスノイズを適用することで、近似最適解の精度が向上した。今回は新たに、カオスを適用した焼きなまし法やタブー探索法を提案する。また、このようなカオスノイズが最適化アルゴリズムに有効である理由について、様々な視点から帰納的に分析する。
▷ 応用カオス(4) [3月7日:15:00-16:00:508](座長:山口 明宏)
- Vector Stream Cipher (VSC暗号) の安全性の向上について / ○岩崎 淳 (京都大学情報学研究科), 梅野 健 (京都大学情報学研究科) [概要]
Vector Stream Cipher (VSC)は2次の多項式のカオス性を用いた高速なストリーム暗号として提案されているが,初期ベクトル,秘密鍵の長さが128bit版のVSC128については,線形特性が調べられており,
それに伴う攻撃の可能性が指摘されていた.
また,VSC128の各ラウンドにおいて全単射性が成立しておらず,このため実効的な鍵長の低下も起きうる.
本発表では,これらに対処するVSC128の改良について述べ, 安全性の向上が達成できることを実効的
な鍵長の評価を基に, 定量的に示す.
- テント写像に基づく擬似乱数列に対するシード依存値の推測について / ○奥富 秀俊 (東芝情報システム株式会社) [概要]
テント写像に基く擬似ランダムビット列について,該系列の生成に利用されたシード情報の推測法をめぐり,推測が容易なケース,困難なケース,について,現時点までの研究状況を説明する.
- 接触多様体におけるアトラクターとしてのルジャンドル部分多様体と幾何学的非平衡熱力学 / ○後藤 振一郎 (分子科学研究所) [概要]
平衡熱力学を接触多様体のルジャンドル部分多様体と呼ばれる多様体により記述する方法が提案されている。非平衡熱力学の幾何学的理論を構成するために、本研究では接触多様体のルジャンドル部分多様体以外の点とルジャンドル部分多様体の点を結ぶダイナミクスを、接触ハミルトンベクトル場の接触ハミルトニアンをうまく選ぶことによって構成できることを示す。このダイナミクスは適切な物理的解釈により、非平衡熱力学における緩和過程とみなすことができる。 更に高次元接触多様体は低次元の凸関数ポテンシャルによる統計多様体を誘導することも示した。 研究を通じて、情報幾何学や平衡熱力学で強調されるルジャンドル変換でのある種の対称性を、ルジャンドル部分多様体やルジャンドル部分多様体外で示した。
▷ 応用可積分系(1) [3月6日:09:40-11:00:515](座長:山岸 弘幸)
- 周期戸田格子の部分力学系として実現可能な一般化戸田格子について / ○野邊 厚 (千葉大学教育学部) [概要]
アフィンLie代数を用いた戸田格子の一般化のうち,とくに分岐しないDynkin図をもつアフィンLie代数に対応する,,型戸田格子は,それぞれ,,型戸田格子の部分力学系として実現することができる.このような性質は離散化・超離散化の際にも保たれる.
- ある符号付き超離散QRT系に対するカルマンフィルタ / ○薩摩 順吉 (武蔵野大学), 礒島 伸 (法政大学) [概要]
あるQRT系に対する符号付き超離散類似を導出し,不定型発展を用いて周期解を構成する.この系に雑音を付加し,拡張されたカルマンフィルタを構成し,解軌道の最適な推定値を計算するアルゴリズムを提案する.さらに,数値実験を行い,雑音により乱された解軌道のデータから軌道の推定値を求め,このフィルタの性能を議論する.
- 時間遅れをもつ交通流モデルの離散化及び超離散化 / ○松家 敬介 (東京大学), 金井 政宏 (東京大学) [概要]
本講演では, Newellが提案した時間遅れ微分方程式で記述される交通流モデルの離散化及び超離散化を紹介する. 離散化及び超離散化で得られた差分方程式は時間遅れをもつ. また, それらの進行波解についても議論する.
- 非線形な確率微分方程式の解構造を保つ離散化について / ○上岡 修平 (京都大学), 辻本 諭 (京都大学) [概要]
本講演では非線形な確率微分方程式の時間離散化について考察する. 特に確率ロジスティック方程式や確率ベルヌーイ方程式等の厳密解を持つ非線形系に着目し, それらの時間離散類似として同構造の厳密解を持つ確率差分方程式を構成する. 数値例によりオイラー・丸山法やミルシュタイン法等の汎用差分スキームに基づく差分方程式とも比較する.
▷ 応用可積分系(2) [3月6日:11:10-12:30:515](座長:野邊 厚)
- 楕円数列のHankel行列式解について / ○由良 文孝 (公立はこだて未来大学) [概要]
本講演では、楕円数列(elliptic sequence)がHankel行列式解を持つことを、具体例とともに示す。また、Somos数列との関係についても示す予定である。
- カーボンナノチューブトーラス上の離散ソボレフ不等式の最良定数 / ○山岸 弘幸 (都立産技高専), 亀高 惟倫 (阪大), 永井 敦 (日大) [概要]
カーボンナノチューブトーラス上で離散ラプラシアンを定め,対応する離散ソボレフ不等式を導入し,最良定数を求めた.離散ソボレフ不等式は対象とする立体のたわみの最大幅をたわみの位置エネルギーの定数倍で評価する不等式であり,定数倍のうち最も小さいものが最良定数である.
- 渦糸方程式の自己適合移動格子スキーム / ○丸野 健一 (早稲田大学基幹理工学部), 畑 綾佳 (早稲田大学基幹理工学部) [概要]
渦糸の局所誘導方程式の可積分性を保存する空間離散化を行い,メッシュの格子間隔が自動的に調節される自己適合移動格子スキームを構築する.得られたスキームを用いた渦糸ソリトンの数値計算例を示す.
- ポアンカレ不変量と運動量保存則 / ○佐々 成正 (日本原子力研究開発機構) [概要]
これまで、非線形偏微分方程式の時間発展に
シンプレクティック数値積分法を適用した場
合の運動量保存則について考察を行ってきた。
シンプレクティック数値積分法は相空間の面
積和を保存する、すなわちポアンカレ不変量
を保つ計算法と定義されている。本研究では、
ある条件下において、ポアンカレ不変量=系
の全運動量 と言えることが判明した。すな
わち、シンプレクティック数値積分法を適用
すれば、半ば自動的に運動量保存則が成り立
つことがわかった。
▷ 折紙工学(1) [3月6日:13:30-14:50:508](座長:渡邉 尚彦)
- 折り畳み構造の試作と双安定特性に関する検証 / ○石田 祥子 (明治大学理工学部機械工学科) [概要]
本研究は,ねじり座屈パターンからなる折り畳み構造を汎用的な金属材料で試作し,双安定性という構造の特性を活かした産業応用を目指すものである.本講演では,試作に際しなされた検討,試作された構造の双安定性の検証,今後の課題について述べる.
- 対話的操作を基本とする可展面パッチ集合に基づく紙模型用形状構築システム / ○細田 翔 (筑波大学), 三谷 純 (筑波大学), 金森 由博 (筑波大学) [概要]
可展面パッチの集合による形状表現を用いることで、滑らかな曲面を持つ紙模型 を制作できるシステムの開発を行った。曲面は、制作者の意図を反映しやすいよ うに対話的に編集操作できるものとし、曲面同士が交わる箇所でのトリム処理、 およびポリゴン近似を用いない展開図生成機能を組み込んだ。
- Control of a Robot Manipulator Based on Human Brain Models for Paper Folding Applications-1st Report- / ○ロメト フリアン (明治大学), ディアゴ ルイス (明治大学), 篠田 淳一 (明治大学), 萩原 一郎 (明治大学) [概要]
ニューラルネットワーク新しいと新しい最役制御理論で折紙ロボットを作る検討の第1報で構想とニューラルネットワークの威力を示す。
- Development of Robot for Folding Origami / ○タイ タオ (明治大学), ディアゴ ルイス (明治大学), グエン ホアン (明治大学), 萩原 一郎 (明治大学) [概要]
Folding origami is such a challenge for robotic operation. The number of folding fingers is needed to be considered carefully. For human, they use all 5 fingers in each hand to fold and form the shape from folding pattern. However, it is difficult to build a folding arm mimicking human operation because human has dozens of freedoms in their hand, sensitive skin and binocular vision. In this paper, we consider the folding ability of 2 robotic arms, each robot has 2 fingers, instead of 5 fingers as human hand. We first analyze the difficulty of folding patterns through an origami model: origami cylinder. Then, the design of robotic mechanism that is able to fold the crease pattern is figured out. The behaviors of robot arms are investigated carefully by mimicking human operation during folding process. Image segmentation, learning and prediction hand stages have been applied to control the robotic arm motion.
▷ 折紙工学(2) [3月6日:15:00-16:20:508](座長:石田 祥子)
- 折紙式津波ポッドの最適化のモデリングとシミュレーション / ○中山 江利 (明治大学), グエン ホアン (明治大学), 戸倉 直 (明治大学), 萩原 一郎 (明治大学) [概要]
地震などで津波の発生が予測される緊急事態に,高齢者,身障者など自力で高所への移動が困難な災害弱者が一時避難するための入れ物「津波ポッド」の3Dモデルを生成し,物性情報や境界条件などを設定した後,津波に押し流され堅い壁に衝突するシミュレーションを行った.初回のシミュレーションによる,衝撃による津波ポッドの歪みの程度と乗員の頭部傷害値結果に基づき,安全性能を高めるため津波ポッドの板厚,ヤング率の最適化を行った.
- 曲線折の三次元形状計測 / ○深見 祐士 (大阪府立大学) [概要]
曲線折とは折り線図が直線の折り線で構成される通常の折紙と異なり、曲線の折り線で構成され、折り線を折ると同時に可展な曲面を形成し特有の立体形状となる。また、曲線折においてはその折り線図と形成される立体形状の関係性が不明な点が多い。本研究では三次元画像応用計測システム(Kuraves-MD)を用いて曲線折の立体形状の実計測を行い、曲線折の立体形状と折り線図との関係性を分析・考察を行う。
- 高次項を考慮した剛体折紙の畳込み経路解析 / ○渡邉 尚彦 (岐阜工業高等専門学校) [概要]
不伸長トラスの解析手法の一つとして一般逆行列を使用した方法が提案されている.既存の研究では2次項まで考慮することにより,微小範囲で変形可能ながら有限範囲で変形不可能な変形モードの抽出,また制約条件付き最適化問題として扱った変形経路追跡においては精度の向上が可能なことが示されている.これらの不伸長トラスを対象とした2次項までの考慮により得られている知見を,剛体折紙モデルに適用した結果を示す.
- Cell co-culture system using origami folding technique / ○何 倩 (北海道大学・大学院保健科学研究院 健康イノベーションセンター), 惠 淑萍 (北海道大学・大学院保健科学研究院 健康イノベーションセンター), 繁富(栗林) 香織 (北海道大学・大学院保健科学研究院 健康イノベーションセンター) [概要]
Human body is a 3-dimensional (3D) structure within various cells. Therefore, heterotypic 3D co-culture is essential for investigating the realistic functions of cells by mimic tissues and organs of human body.
We developed a method to produce 3D cell-laden microstructures for co-culture by a combination of microelectromechanical systems (MEMS) and origami folding technology. This micro device which can be folded and formatted a 3D microstructure by cells called cell origami. In this study, the 3D cell laden co-culture microstructures were formatted by seeding 3T3 and HepG2 cells on the microplates in sequence and applied by the cell traction force (CTF) as a biological driving force produced by micro technology.
We successfully formed the 3D microstructure and co-culture of 3T3 and HepG2 cells by applying microplate. The microstructures can be observed readily under the microscope. The co-culture of 3T3and HepG2 cells was identified readily by the Green and red colors. HepG2 cells located in the central of microstructure were surrounded by 3T3 cells which distributed in the periphery.
3D co-coulture of HepG2 and 3T3 can be easily acquired by applying microplates formatted 3D cell-laden microstructures. The further researches will be done for investigation of response and function of co-culture microstructure.
▷ 科学技術計算と数値解析(1) [3月6日:16:30-17:30:516](座長:緒方 秀教)
- 測地線方程式に対する離散勾配法の適用とアインシュタイン方程式の数値解を用いるための基礎検討 / ○入江 凜 (神戸大学工学部), 谷口 隆晴 (神戸大学システム情報工学研究科) [概要]
一般相対性理論の基礎方程式はアインシュタイン方程式と測地線方程式である.
アインシュタイン方程式は時空の計量を定める方程式であり,その空間の運動はその計量から定まる測地線方程式で記述される.
本研究では測地線方程式に対し構造保存型数値解法を導出し,数値実験によってその性能を比較する.
さらにこれらのスキームで有限要素法を用いて数値的に求めた計量を用いる際に生じる問題について基礎的な検討を行う.
- 陽的ルンゲ・クッタ法をもとにした高速なエネルギー保存解法 / ○小島 広樹 (東京大学), 松尾 宇泰 (東京大学) [概要]
従前より保存系に対して,エネルギー保存解法が提案され使われてきたが,
毎ステップ,高次元の非線形方程式の求解を要し,大規模問題では現実的でない.
そこで本発表では,陽的ルンゲ・クッタ法を摂動選点法して解釈することで,
微分方程式の次元によらず,毎ステップ1次元の非線形方程式を解くだけで済む
高精度エネルギー保存解法を提案する.
また,数値実験をもとに提案手法の有効性を議論する.
- 散逸系に対する可変刻み構造保存解法の漸近挙動解析 / ○佐藤 峻 (東京大学), 松尾 宇泰 (東京大学), 鈴木 秀幸 (東京大学), 降籏 大介 (大阪大学) [概要]
散逸性を保存する数値解法を,時間刻み幅を変化させながら用いると,
漸近挙動の解析が難しくなる.
可変時間刻み下での漸近挙動の研究は,Kloeden—Schmalfussらに
よって行われているが,構造保存解法の解析には至っていない.
本発表では,Klodenらが採用している極限集合の考え方とは
異なるアプローチで漸近挙動を捉えることで,
可変刻みの場合にも適用できるLyapunovの定理を構成する.
- 力学系における閉軌道全域に対する吸引域の同定について / ○樋脇 知広 (電気通信大・情報理工学研究科D2), 山本 野人 (電気通信大・情報理工学研究科) [概要]
力学系における閉軌道の吸引域に含まれる領域を、閉軌道全体を通して精度保証によって同定する方法を論じる.ここではPoincare写像を陽に構成しない精度保証法を用い,得られた領域が軌道に沿った方向に幅を持つことを利用する.
▷ 科学技術計算と数値解析(2) [3月7日:09:40-11:00:516](座長:加古 孝)
- 三角形上の関数補間とその誤差について / 小林 健太 (一橋大学), ○土屋 卓也 (愛媛大学) [概要]
三角形上の関数補間とその誤差解析は、特に有限要素法の数学的理論において重要である。最近、基本的なLagrange補間について、三角形の外接半径(外接円の半径)を用いた誤差評価式が発見された。
本講演では、新たに発見された評価式について、その後の拡張や別証明など、最近の状況を報告する。
- ほとんど非圧縮性の媒質に対する混合型ハイブリッド不連続ガレルキン有限要素法 / ○菊地 文雄 (東京大学), 小山 大介 (電気通信大学) [概要]
不連続ガレルキン有限要素法(DGFEM)の解析が進み,特性や利点が明確になってきた.要素内関数に補間関数を用いる必要がないため,要素形状の制限が緩和され,メッシュ生成や適応型計算に有利なほか,ほとんど非圧縮性の弾性固体や粘性流体の解析で問題であった,圧力と変位ないし流速の近似関数の組み合わせも楽になった.ここでは,ハイブリッドDGFEMに圧力を未知関数に加えた混合型手法に対し,理論的考察と展望を示す.
- 滑らかな領域におけるP1有限要素近似の誤差評価とストークス方程式の滑り境界条件問題への応用について / ○柏原 崇人 (岡山大学大学院環境生命科学研究科), 及川 一誠 (早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科), 周 冠宇 (東京大学大学院数理科学研究科D3) [概要]
滑らかな領域において通常のP1有限要素近似を考えると、領域を厳密に三角形分割できないことから、多角形における場合に比べて誤差評価が難しくなる。特に、非斉次ノイマン境界条件を扱うには境界上の積分の誤差評価を考える必要がある。本講演では、そのような状況を扱うのに有用な補題を提案し、その結果の応用として、ストークス方程式の滑り境界条件問題に対する、ペナルティー法にもとづいた有限要素スキームの誤差解析を紹介する。
- 電磁波動散乱問題に対する電界型積分方程式のHdiv内積を用いた離散化 / ○赤木 翔 (京都大学情報学研究科), 西村 直志 (京都大学情報学研究科), 新納 和樹 (京都大学情報学研究科) [概要]
電磁波動散乱問題の数値解を高速・高精度に求めることは、電磁気学における重要な課題である。一般にはこれは難しい問題であり、その原因の一つとして周波数が小さいときに精度が著しく悪化する低周波問題が挙げられる。そこで、従来法とは異なり周波数に依存する係数を持つHdiv内積を用いて積分方程式を離散化する数値解法を試みた。数値計算の結果、定数倍の計算量で低周波問題の精度を大きく改善できることがわかった。
▷ 科学技術計算と数値解析(3) (〜12:50) [3月7日:11:10-12:50:516](座長:杉原 正顯)
- 表面性状の違いを考慮した粒子法によるスプラッシュの数値シミュレーション / ○横山 真男 (明星大学), 矢川 元基 (東洋大学) [概要]
本研究では、流体と物体の相互作用を扱う数値シミュレーションを行うにあたり、物体の表面性状の違いを計算に導入する方法を提案する。表面性状の考慮が必要な流れのシミュレーションにおける物体壁面の条件の取り扱いについて言及し、例として球体の落下によるスプラッシュの粒子法(MPS法)による計算へ導入する方法について述べ、壁面の滑りおよび引力を考慮して計算したシミュレーション結果を実験との比較によって評価する。
- 数値等角写像を利用した代用電荷法の種々の境界値問題への適用 / 青山 高之 (愛媛大学大学院理工学研究科電子情報工学専攻), 明石 悟 (愛媛大学大学院理工学研究科電子情報工学専攻), ○岡野 大 (愛媛大学), 遠藤 慶一 (愛媛大学) [概要]
代用電荷法による数値等角写像は、簡便・高精度な近似写像関数と同時に、その導関数の近似も与える半解析的な計算法である。
これを利用して適切な電荷点・拘束点を配置し、第1種〜第3種境界条件下のポテンシャル問題に代用電荷法を適用できることを報告する。
- 非整数階常微分方程式に対する高精度陽的数値計算法 / ○竹内 裕貴 (東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻) [概要]
非整数階微積分とは通常の微積分の階数を拡張した概念であり、非整数階微分を用いた常微分方程式は制御系や粘弾性体のシミュレーションなどに広く用いられている。非整数階常微分方程式に対する陽的な数値計算法として2次精度の予測子修正子法が提案されている。本研究では高精度な差分式を用いて既存の予測子修正子法よりも精度の高い3次精度の陽的数値計算法を提案し数値実験を行った。
- 64ビット高性能線形擬似乱数発生法の開発 / ○木本 貴光 (東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 修士2年), 原瀬 晋 (東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 学振PD) [概要]
擬似乱数発生法は科学技術計算の基本的な道具である.64ビット整数出力については西村(2000)による64ビットMersenne Twister(MT)擬似乱数発生法,斎藤–松本(2008)によるSIMDを用いたSFMT法などが開発されている.実は,これらの発生法では,性能評価指標であるvビット精度均等分布次元が必ずしも理論上の上限まで最適化されていない.本研究では,vビット精度均等分布次元が最適化された64ビット整数出力の擬似乱数発生法を開発する.
- 高速Hh変換の提案とジャンプ拡散モデルの下でのオプション価格評価への応用 / ○信原 貴也 (神戸大学), 山本 有作 (電気通信大学), 横川 三津夫 (神戸大学) [概要]
N個の離散点における関数値とガウス分布との畳み込みをO(N)で行うアルゴリズムは高速ガウス変換と呼ばれ、統計学や金融工学などに多くの応用を持つ。本発表では、ガウス分布を一般化したHh関数と呼ばれる特殊関数に対する高速な畳み込みのアルゴリズムを提案する。また、本アルゴリズムがKouのモデルと呼ばれるジャンプ拡散モデルの下でのオプション価格評価に有用であることを示す。
▷ 行列・固有値問題の解法とその応用(1) [3月6日:09:40-11:00:516](座長:山本 有作)
- レゾルベントの多項式をフィルタとして用いた一般固有値問題の近似解法について / ○村上 弘 (首都大学東京) [概要]
フィルタの作用を利用して,実対称定値一般固有値問題の固有対で固有値が指定区間にあるものだけを解く.使用するフィルタはある虚数シフトのレゾルベントとその共役の作用の多項式として構成する.
- ある種の構造を持つ非対称帯行列に対する固有ベクトル計算 / ○竹内 弘史 (東京理科大学), 相原 研輔 (東京理科大学), 福田 亜希子 (芝浦工業大学), 石渡 恵美子 (東京理科大学) [概要]
離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に関連する構造を持つ非対称帯行列の複素固有ベクトルを,実数による演算のみで効率よく計算する方法を示す.
- Hessenberg型でないTN行列の逆固有値問題に対する有限ステップ解法について / ○赤岩 香苗 (京都大学大学院情報学研究科), 中村 佳正 (京都大学大学院情報学研究科), 岩﨑 雅史 (京都府立大学生命環境学部), 近藤 弘一 (同志社大学大学院理工学研究科) [概要]
すべての小行列式が非負となるような行列はTotally Nonnegative (TN) 行列と呼ばれる。Hessenberg型のTN行列の逆固有値問題に関しては、離散ハングリー戸田方程式の視点から有限ステップ解法の定式化に成功している。
本講演では、離散ハングリー戸田方程式の拡張を通じて、Hessenberg型でないTN行列の逆固有値問題も有限ステップで解けることを明らかにする。
- 行列のすべての固有値と不変部分空間に対する数値的検証法 / ○宮島 信也 (岐阜大学工学部) [概要]
n次行列のすべての固有値とそれらに対応する不変部分空間に対する数値的検証法を提案する.この方法の計算コストは多くの場合O(n^3)のみである.また,この方法は対角化不可能な行列に対しても適用可能である.
▷ 行列・固有値問題の解法とその応用(2) [3月6日:11:10-11:50:516](座長:曽我部 知広)
- 厳密な物理的保存則をもつクリロフ部分空間解法の構築 / ○星 健夫 (鳥取大学, JST-CREST) [概要]
近年筆者らは実問題(大規模電子状態計算)の基礎として、一般化エルミート固有値問題に対して複数クリロフ部分空間の直和を用いる解法(多重アーノルディ法)を構築し、
厳密な物理的保存則をもつことを示した[1]。本講演では、その数学的拡張について述べる。[1] T. Hoshi,et al., J. Phys.: Condens. Matter 24, 165502 (2012).
- 直交QDアルゴリズムによる高精度特異値分解について / ○田中 博基 (京都大学), 木村 欣司 (京都大学), 石上 裕之 (京都大学), 中村 佳正 (京都大学) [概要]
発表者らはvon Matt(1994)により提案された直交QD法に対して,より高精度に特異値分解を行うためのアルゴリズムと実装上の改良を行ってきた. しかし, 本研究部会の第18回研究会(2014)で報告したように,特異値がクラスタとなる行列の場合には特異値分解の誤差がDemmel-Kahan QR法(LAPACK) と比較して大きくなることが課題として残されていた. 本講演では, スプリット判定法を改良することにより, この課題が解決したことを報告する.
▷ 行列・固有値問題の解法とその応用(3) [3月6日:13:30-14:50:516](座長:櫻井 鉄也)
- 並列化した多倍長行列積計算の性能評価 / ○幸谷 智紀 (静岡理工科大学) [概要]
キャッシュ最適化と並列化を行った多倍長行列積計算のマルチコアCPU環境下における性能評価を行い,LU分解の高速化に寄与できることを示す。また,GPU環境下での性能についても比較考察する。
- Xeon Phi における部分固有対計算の高速化に向けて / ○石上 裕之 (京都大学), 木村 欣司 (京都大学), 中村 佳正 (京都大学) [概要]
メニーコアプロセッサの一つである Xeon Phi を用いた2分法と再直交化付きブロック逆反復法に基づく部分固有対並列計算の高速化の現状,とりわけ,Xeon Phi の性能を引き出す上での課題について報告する.
- 超並列固有値計算のための最適複合化数理ソルバと電子状態計算におけるベンチマーク / ○井町 宏人 (鳥取大学, JST-CREST), 星 健夫 (鳥取大学, JST-CREST) [概要]
一般化固有値問題の超並列計算のために、ScaLAPACK、ELPA、EigenExaの3つの固有値問題ライブラリからルーチンを組み合わせることで、最適に複合化された数理ソルバを構築した。電子状態計算における10,000から1,000,000次元行列の問題について、京コンピュータを含む種々のスーパーコンピュータ上でのベンチマーク結果を示す。
- オンライン自動チューニングのための性能モデルの構築法 ~ 正方行列の特異値分解を例にして ~ / 長島 聖児 (神戸大学), 深谷 猛 (理化学研究所 計算科学研究機構/JST CREST), ○山本 有作 (電気通信大学/JST CREST), 横川 三津夫 (神戸大学) [概要]
オンライン自動チューニングでは,プログラムに含まれる性能パラメータを実行履歴に基づき逐次的に修正し,実行時間などのコストを最小化する。そこでは,自動チューニング機構で用いる性能モデルが重要な役割を果たす。本発表では,特異値分解を例にとり,効率的な自動チューニングのための性能モデル構築法を検討する。
▷ 行列・固有値問題の解法とその応用(4) [3月6日:15:00-16:00:516](座長:中村 佳正)
- 直交制約付き最適化問題に対するニュートン方程式の求解について / ○相原 研輔 (東京理科大学), 佐藤 寛之 (東京理科大学) [概要]
ある種の直交制約付き最適化問題に対するニュートン方程式は,複雑な行列方程式で表される.本発表では,これを標準的な連立一次方程式の形式に変換し,反復法を用いて効率的に解く方法を提案する.
- CP分解アルゴリズム:Reduced ALSの性能評価 / ○村越 智文 (東京大学), 松尾 宇泰 (東京大学) [概要]
3次元テンソルの解析に有効なCP分解を行うアルゴリズムの中で,最も利用される手法はALSである.著者らは前回の年会のポスター発表で,行列の次元削減を応用し高速化したReduced ALSを提案した.本発表では,Reduced ALSの性能を評価し,更に代数的なCP分解アルゴリズムとの比較を行う.
- 副対角Pade近似による行列指数関数の効率的アルゴリズム / Guettel Stefan (University of Manchester), ○中務 佑治 (東京大学) [概要]
行列の指数関数計算には多くのアルゴリズムが知られているが、中でもScaling-Squaringに基づくものがよく使われている.本発表では関数近似論の立場からこのアルゴリズムを再考し、副対角Pade近似を用いてscalingを従来より大幅に小さくすることができ、overscalingによる数値不安定性を解消できることを示す.
▷ 計算の品質(1) [3月7日:11:10-12:30:510](座長:尾崎 克久)
- 楕円型線形逆作用素評価の収束性について / ○渡部 善隆 (九州大学), 木下 武彦 (京都大学), 中尾 充宏 (佐世保工業高等専門学校) [概要]
講演者はこれまで、2階楕円型線形作用素の可逆性と逆作用素ノルムの厳密な上界を与える精度保証付き数値計算手法を提案して来ました。本講演では、これまで得られた方法を紹介するとともに、逆作用素ノルム評価の収束性についての考察を与えます。
- On the spectral-shift method in Lehmann-Goerisch’s theorem / ○劉 雪峰 (新潟大学) [概要]
For the eigenvalue estimation problem of differential operators, Lehmann-Goerisch’s theorem introduces an auxiliary variational problem with test function in infinite dimensional space and then provides high-precision eigenvalue bounds. However, the auxiliary variational problem cannot be solved exactly and the spectral-shift method is developed to deal with this problem. In our research, we show that by using well-constructed finite element space, the auxiliary variational problem can be easily solved and thus the high-precision eigenvalue bounds can be easily obtained. Several examples along with computational results are demonstrated to show the versatility of our proposed framework using finite element methods.
- 半線形熱方程式の解に対する精度保証付き数値計算法を用いた時間大域解の存在証明 / ○水口 信 (早稲田大学), 高安 亮紀 (早稲田大学), 久保 隆徹 (筑波大学), 大石 進一 (早稲田大学, CREST JST) [概要]
半線形熱方程式に対する時間大域解の計算機援用証明法の1つを提案する.
熱方程式に対する解析半群を用いて2つの不動点形式を構成する. それらの不動点形式と Banachの不動点定理により, ある時刻t>0までの解が近似解の近傍内で一意に存在する十分条件と時刻 t>0以降で解が定常解へ漸近していく十分条件が与えられる.
その十分条件が満たされているか精度保証付き数値計算でチェックすることで時間大域解の存在を示す.
- Lyapunov関数を用いた不安定多様体の精度保証について / ○山野 駿 (電気通信大・情報理工学研究科M1), 藤田 直哉 (電気通信大・情報理工学部4年), 山本 野人 (電気通信大・情報理工学研究科) [概要]
ODEで記述される力学系の不動点がサドル型である場合、その不安定多様体の通過領域を精度保証で同定する。ここでは、lyapunov関数を構築し、これを利用して負の時間方向へ解を追跡する方法と松江によるm錐体を用いる方法について議論する。
▷ 計算の品質(2) [3月7日:13:30-14:50:510](座長:渡部 善隆)
- Fast-slow systemにおける時間大域軌道の精度保証付数値計算 / ○松江 要 (統計数理研究所・数学協働プログラム) [概要]
本講演では特異摂動問題の一種であるfast-slow systemの生成する力学系に対して、特異極限系の軌道からの摂動として得られる大域軌道の数値検証法をお話します。鍵となるアイデアは幾何学的特異摂動法の位相解析的アナロジーです。0から与えられたまでの任意のに対して、特異コネクティングオービットの摂動としての周期軌道やホモクリニック軌道、ヘテロクリニック軌道の存在検証が可能となります。マルチスケール問題の解析に一石を投じる事が期待されます。
- Muhammad–MoriのSE公式に対する定数を明示的に表した誤差評価 / ○岡山 友昭 (広島市立大学), 町田 洸一 (広島市立大学) [概要]
Stengerは、遠方で指数的に減衰する関数の半無限積分に対し、変数変換と複合台形則を組み合わせた一重指数関数型公式(SE公式)を提案しており、また岡山により定数を明示的に表した誤差評価が行われている。一方、異なる変数変換と複合台形則を組み合わせたSE公式がMuhammad–Moriにより考えられているが、誤差評価がないため、単純にStengerのSE公式と比較はできない。そこで本研究ではMuhammad–MoriのSE公式に対し定数を明示的に表した誤差評価を行う。
- ヤコビの楕円関数の精度保証付き数値計算法 / ○宮崎 敏文 (早稲田大学大学院 基幹理工学研究科), 柏木 雅英 (早稲田大学 理工学術院) [概要]
ヤコビの楕円関数は第一種楕円積分の逆関数を用いて定義される関数であるが、その定義方法ゆえに関数値を精度よく計算するには困難が生じる。本発表では、ヤコビの楕円関数について成り立つ諸性質を利用し、関数値を効率よく精度保証付き数値計算する方法について述べる。
- Affine Arithmeticのダミー変数で用いるペナルティ関数について / ○小松 勇斗 (早稲田大学), 柏木 雅英 (早稲田大学) [概要]
Affine Arithmetic を用いると演算のたびにダミー変数が増えるため、演算を繰り返すとプログラム実行時間が増えていく。そこで精度を維持しつつ、計算時間を抑えるため、ダミー変数を削減する方法をとる。本研究ではダミー変数の削減基準を決めるペナルティ関数の定義に数学的証明を与えた。
▷ 計算の品質(3) [3月7日:15:00-16:00:510](座長:山中 脩也)
- 低精度演算を用いた区間行列積の加速とその過大評価について / ○尾崎 克久 (芝浦工業大学), 荻田 武史 (東京女子大学), Bünger Florian (ハンブルグ工科大学), 大石 進一 (早稲田大学) [概要]
本講演では区間行列積を取り扱う.中心・半径型の区間行列の積は,主に通常の行列積を数回行うことにより達成される.その行列積の中には,必要な精度を落としても結果に影響をあまり与えない計算を含んでいる.よって,その計算に低精度演算を適用することで,計算時間の短縮を達成した.また,低精度演算を利用した場合の区間幅の過大評価に関する考察を与えた.
- H行列の性質を用いた連立一次方程式における精度保証付き数値計算法に関する一考察 / ○南畑 淳史 (早稲田大学大学院基幹理工学研究科), 荻田 武史 (東京女子大学), 大石 進一 (早稲田大学) [概要]
本発表ではH行列の性質を用いた連立一次方程式における精度保証付き数値計算法について発表する。
H行列の性質を用いた精度保証付き数値計算法は与えられた行列が悪条件の際でも精度よいことで知られている。
近似解と真の解との誤差をH行列の性質を用いて評価する方法に関して考察を行う。
- 精度保証付き多倍長演算ライブラリLILIBについて / ○松田 望 (電気通信大・情報理工学研究科D3) [概要]
四則演算と平方根の計算が可能な、精度保証付き多倍長演算ライブラリを開発した。
区間演算の実装では、区間の下端と上端を保持する方法が一般的である。
しかし、精度保証付き多倍長区間演算の場合、実装方法を工夫することによって、区間の中心値と半径を保持する方法の方が、計算速度・メモリ効率の両面で有利になる。
中心値・半径方式に適した演算手法を考案し、実装した。
▷ 数理医学(1) [3月7日:09:40-11:00:511](座長:鈴木 貴)
- (40分講演) 心筋細胞の数理モデル / ○林 達也 (東京大学大学院数理科学研究科), 時弘 哲治 (東京大学大学院数理科学研究科), 栗原 裕基 (東京大学大学院医学系研究科), 野村 典正 (東京医科歯科大学生体材料工学研究所), 安田 賢二 (東京医科歯科大学生体材料工学研究所) [概要]
心筋細胞の同期現象についての有名な実験結果として,五島喜与太氏による結果がある(以下,五島モデルと呼ぶ).五島モデルとは,心筋細胞が同期するときは速い拍動周期をもっていた細胞のリズムにそろう,というものである.本研究では,まず,相互作用をもつ2個の心筋細胞について五島モデルを再現する数理モデルを構成し,実験事実と比較し,より現実的な数理モデルの構成を目指した.本発表では,このモデルのシミュレーション結果と五島モデルの比較検討をする.
- 心肥大関連因子ネットワークの解析と現象へのフィードバック / ○伊藤 昭夫 (近畿大学工学部), 角谷 敦 (広島修道大学経済科学部), 山本 和彦 (近畿大学工学部) [概要]
心肥大関連因子ネットワークを考察の対象とし.システム生物学からのアプローチによって導出される常微分方程式系を理論および数値計算の両面から解析する.特に,理論解析結果と数値計算結果の違いに着目しながら現象へのフィードバックを行い,新たな知見を得ようとする試みについて報告する.実際には,動的平衡状態への収束やネットワークの破綻現象などを現象論的な立場から考察する.
- Numerical method for Stefan-like problem of signal process in an individual cancer cell model / ○Admon Mohd Ariff Bin (Division of Mathematical Sciences, Department of System Innovation, Graduate School of Engineering Science, Osaka University, 1-3 Machikaneyamacho, Toyonakashi, 560-8531 Osakafu, Japan) [概要]
Invadopodia are actin-based protrusions located in the subcellular region whose function to degrade the extracellular matrix (ECM) that leading to the proliferation of cancer cell. Signaling process through receptors on the membrane surface is important in the actin polymerization and regulation of matrix metalloproteinases (MMPs), in which contribute to the invadopodia formation. Here, we considered one-dimensional integrated penalty – formulated for Stefan-like problem of the signal process. We introduced an approximation model with penalty term in diffusion equation which approximates the boundary condition on the free boundary. The signal velocity on the free boundary is then calculated by the integration of the penalty term. We performed numerical results by implementing finite-difference scheme for the above integrated penalty method. Our results are compared to the other known fixed domain method for validation.
▷ 数理医学(2) [3月7日:11:10-12:30:511](座長:石渡 通徳)
- (40分講演) 汎生物ネットワーク的な動特性の解析 / ○坂田 克己 (公立大学法人 前橋工科大学), 大柳 一 (公立大学法人 前橋工科大学), 齋藤 俊行 (独立行政法人 放射線医学総合研究所) [概要]
我々は大規模なヒト転写ネットワーク中にシステムワイドな構造を見出した。それに類似のネットワーク構造は生態ネットワークの構造(Rooney et al. 2006)に見られる。データを精査したところ、ネットワーク間の類似性が構造の類似性に留まらず、情報伝達速度の非対称性に及ぶ事が示唆された。本講演では、転写ネットワーク及び生態ネットワークについて、数学モデルに基づいた伝達特性の討論を最新の解析結果を交えて行う。
- Biomagnetic Signal Denoising for Improving Brain Sources Localization / ○Nuanprasert Somchai (Department of Systems Innovation, Graduate School of Engineering Science, Osaka University) [概要]
Knowledge of underlying brain source helps to enhance a disorder treatment; however, the accuracy of estimation is naturally limited by the contaminated noise and artifact. In this talk, I present the denoising methods for a multichannel measurement system based on the assumptions of colored noise and spatially low-rank signal between channels. The proposed framework using generalized singular value decomposition (GSVD) can unify the traditional signal subspace methods and provide the new insight into the signal recovery and blind source separation (BSS) perspectives. The effectiveness of the implemented optimization schemes is validated using magnetoecephalography (MEG) signal from various simulated and benchmark datasets.
- MT1-MMPタイプのパスウェイネットワークのn分子への拡張と解析 / ○板野 景子 (大阪大学), 鈴木 貴 [概要]
Proteolytic degradation of the extracellular matrix (ECM) plays an important role in tumour invasion and metastasis.Matrix metalloproteinases (MMPs), and in particular the transmembrane MT1-MMP (also known as MMP-14), are key enzymes in tumour-cell invasion. Especially, complex formation of MT1-MMP, MMP2, and TIMP2 activates MMP2 to pro MMP2. This MMP2 activated promotes degradation of ECM.This MT1-MMP network have been analyzed by T.Suzuki, K.Ichikawa, and so on.
We generalized the MT1-MMP network with 3 monomers to “the n-monomer network” which consists of n monomers. Generalization of the network makes it easier to understand the network system structure and its unique characteristic resulting from the structure.
We classify the complexes to some groups by the formation of the complexes, especially, by the type of edge monomer in the complexes.We found the total concentration of a group complexes converges to equilibrium solution. There are 2 types convergence behaviours for one group. The convergence behaviour of the group concentration depends on reaction rates and initial values of some monomers, which are the edge monomers of group complexes.
Once the group concentrations are given, we obtain the solution of the complex concentrations in every group of the network, respectively.
▷ 数理政治学 [3月6日:09:40-11:00:508](座長:大山 達雄)
- 空間的投票理論における政党認識誤差の影響 / ○岸本 一男 (筑波大学) [概要]
Downs のモデルにおいて,有権者の政党位置認識に誤差がある場合,その誤差がどのような影響があるかを述べる.
- 国連総会投票データへのモジュラリティ最大化コミュニティ検出法の適用 / ○坂本 正樹 (慶應義塾大学大学院), 田中 健一 (慶應義塾大学), 栗田 治 (慶應義塾大学) [概要]
本稿は,ネットワーク分析におけるモジュラリティ最大化によるコミュニティ検出法を国際連合総会における各国投票データに適用することにより,政治的近接性に基づく国家間コミュニティの構造分析を試みた研究である.分析において,冷戦期と冷戦後の時代毎のコミュニティ構造の変遷や,議題テーマ別の領域におけるコミュニティ構造の違いについて特に注目して比較考察を行った.
- 緩和除数方式による議員定数配分の偏りについて / ○ハンスックウォラパーニット スマッチャヤー (大阪工業大学大学院), 一森 哲男 (大阪工業大学) [概要]
議席を配分するときには,各地域(政党)にできるだけ公平に配分すること.すなわち,1議席あたりの人口をできるだけ等しくするが重要である.しかしながら,配分される議席数は小さな整数に限定されるため,どうしても配分結果に偏りが生じる.本研究では,これまでに提案されている3つの偏りを測る尺度を用いて配分方式の偏りを調べてみた.
- Quantitative Data Analysis on Recent Elections in Japan / 大山 達雄 (政策研究大学院大学), ○アザド アブル カラム (政策研究大学院大学), ラーマン アリフール (政策研究大学院大学) [概要]
わが国の最近行われた衆議院、参議院の6つの選挙を対象に統計データ解析結果を発表する。主要データとしては、投票率、得票率、死票等を用いて3乗則その他の検証を行う。
▷ 数理設計(1) [3月7日:13:30-14:50:515](座長:畔上 秀幸)
- 最適密度問題の楕円型正則化 / ○海津 聰 (東京理科大学) [概要]
コンプライアンスを最小化にする最適形状や,最適位相形状を,設計領域のコスト(コンプライアンス)を最小にする,密度最小問題と捉えることができる.
この観点に立ち,コストが密度の凸汎関数であることを確認し,その劣微分が零値である密度を求める問題として定式化し,この問題の楕円型正則化が可能であることを示す.
- 高精度数値解法を用いた密度型位相最適化問題に対するH1勾配法 / 渡邉 祥 (愛知県立大学大学院情報科学研究科), ○代田 健二 (愛知県立大学情報科学部) [概要]
本研究では,高精度数値解法とH1勾配法を組み合わせた高精度最適設計手法の開発を行う.高精度数値解法として任意多点差分法,多倍長環境として exflibを採用する.ポアソン方程式による密度型位相最適化問題に対する数値実験を実施し,開発手法の有効性を検討する.
- 平均流れ抵抗を評価関数とする流れ場の密度型位相最適化問題( Topology optimization problem of density type for flow field using mean flow resistance as cost function) / ○橋本 一輝 (名古屋大学), 畔上 秀幸 (名古屋大学) [概要]
流れ場の密度型位相最適化問題が平均流れ抵抗とよぶ評価関数を用いて構成される.その評価関数の設計変数に対する微分を求める際,Stokes 問題においては自己随伴関係が成り立つ.孤立物体周り および流入と流出境界が指定された2次元流れ場を対象にした Stokes 問題と Navier-Stokes 問題に対して数値例が示される.
- Stokes流れ場の形状最適化問題における流れ抵抗を表す評価関数 / ○木村 悠伸 (名古屋大学), 畔上 秀幸 (名古屋大学) [概要]
これまでStokes流れ場の形状最適化問題では流れ抵抗を表す評価関数として散逸エネルギーが使われてきた.本研究では自己随伴が成り立つような評価関数が新たに平均流れ抵抗とよんで定義され,その形状微分の評価方法が示される.また,従来の評価関数を用いた場合の形状微分の評価方法について再点検がなされ,数値例による比較も示される.
▷ 数理設計(2) [3月7日:15:00-16:20:515](座長:代田 健二)
- 数値シムレーション半導体回路の変数選択時の電流・電圧(IV)特性による信頼性設計 / ○森 輝雄 (森技術士事務所) [概要]
半導体回路パターンの信頼性は形成された線路の凹凸・広狭などの寸法形状,回路の構成材料の均一性と不純物の存在に支配される.この回路に印加する電圧の上限は電流値の上昇傾向が低下する電圧までとする.ここでは定格の10倍程度までの電圧を印加する. 回路パターンが理想通りに形成されているとIV特性は直線になるが、外れていると曲線になる。これらは回路CAEで変数選択時にも確認できる。このIV特性の非線形効果が回路の信頼性と関係していることを述べる。
- 位相記述法に基づくシリコンニューロンの遅延誘起同期機構の最適化設計 / ○中田 一紀 (電気通信大学大学院情報理工学研究科), 三浦 佳ニ (東北大学大学院情報科学研究科) [概要]
生体医工学の応用において,神経細胞の動作を集積回路上に再現するシリコンニューロンは重要な要素回路のひとつである.本発表では,位相記述法に基づいてシリコンニューロンのネットワーク同期機構を最適化するための設計手法について提案する.まず,シリコンニューロンモデルの動作方程式から,周期発火している状態での摂動の効果を表す位相応答関数を求めた.次に,ネットワークの同期条件を明らかにするために,線形安定性解析を行った.その結果,ネットワークを構成するシリコンニューロン間の相互作用に伝達遅延がある場合に,位相応答関数の極値の位置に応じて同期が誘起されることを明らかにした.以上の解析の結果に基づいて,ネットワーク同期を効率的に達成するためのシリコンニューロンの設計原理について示す.
- 導波管の伝送特性に関する形状最適化問題 / ○佐竹 正義 (株式会社 日本自動車部品総合研究所), 畔上 秀幸 (名古屋大学大学院 情報科学研究科) [概要]
電磁波の伝送に用いられる導波管の形状最適化問題が構成され,その解法が示される.設計変数には導波管の領域変動を選び,主問題には電磁場の周波数応答問題が設定される.評価関数には伝送ロスの積分を用い,評価関数の形状微分を随伴変数法で求め,H^1勾配法による形状更新法が示される.円形導波管に対する数値例は経験的に知られた理想形状と同程度の性能をもつことが示される.
- 医療用データに基づく患者脊柱数値モデルの構築 / 佐藤 由実 (名古屋大学), ○畔上 秀幸 (名古屋大学) [概要]
特発性側弯症患者の医用画像に適合するように正常な脊柱有限要素モデルを変形させる問題が構成され,その解法と数値例が示される.椎体ごとに幾何学的変換による椎体別適合モデルが与えられていると仮定する.設計変数には正常なモデルの密度が選ばれる.主問題には正常なモデルにその境界から椎体別適合モデルの境界までの変位を境界力におきかえたときの大変形問題が設定される.評価関数にはその変位の2乗ノルムが使われる.
▷ 数理的技法による情報セキュリティ [3月7日:09:40-10:50:510]
- Tamarin Proverによる投票プロトコルの安全性検証 / ○櫻田 英樹 (日本電信電話株式会社) [概要]
KremerとRyanは藤岡らの提案した投票プロトコルFOOおよびその様々な安全性を応用π計算の枠組みで記述し、ProVerifツールを用いて検証した。しかし、二重投票ができないという性質は検証していない。その原因として、二重投票不能性をProVerifツールで記述・検証できないことが挙げられる。また、彼らがFOOの記述で用いたブラインド署名の形式化は、形式化の計算論的健全性がブラインド署名の基本的な安全性(偽造不能性およびブラインド性)からは導けないという問題がある。例えば、FDH-RSAブラインド署名を用いる場合、彼らの形式化でカバーできない攻撃がある。櫻田はこれにかわる新しい形式化を提案し、計算論的健全性を証明したが、検証ツール上でこれを利用した例は無い。本発表では、MeierとSchmidtらによって開発されたプロトコル検証ツールTamarin Prover上で櫻田のブラインド署名の形式化を記述し、FOOプロトコルの二重投票不能性を検証する取り組みについて述べる。
- Mizarによるnegligible function の形式定義について / ○岡崎 裕之 (信州大学), 布田 裕一 (北陸先端技術大学院大学) [概要]
発表等は定理証明システムを用いた安全性証明検証システムの開発を進めている.
暗号理論において,必要不可欠であるnegligible functionの形式化定義を行った.
本発表では形式化記述言語Mizarでのnegligible functionの定義と関連する諸定義
の形式化について報告する.
- (30分講演) 無視し得る確率を表現する論理体系 / ○竹内 泉 (産業技術総合研究所) [概要]
暗号理論では〈確率の差が無視し得る位小さい〉という概念が頻繁に登場する。本発表では、この〈無視し得る位小さい確率〉を表現することの出来る形式的論理体系を提案する。この論理体系の有用性を示す為に、暗号函数の弁別不能性から投票プロトコルの匿名性を導き出す証明をこの体系の中で行なう。
▷ 数理ファイナンス(1) [3月7日:13:30-14:50:516](座長:石村 直之)
- コピュラの損害保険数理への応用 / ○西脇 悠也 (一橋大学大学院) [概要]
再保険料は複数のリスクに基づき算出され、リスクは確率変数により表現される。通常、過去データからリスクの周辺分布の推定を行うが、保険料計算に必要な同時分布を直接推定することはできない。そこで、コピュラを用いて、周辺分布から同時分布を推定する。リスクの数を2つとし、それらのケンドールのτの違いにより、再保険料の計算にどのような影響があるのか考察した。
- A stochastic model on the risk of epidemic outbreaks for an iinsurer / 石村 直之 (一橋大学), ○石井 千晶 (一橋大学) [概要]
感染症のリスクの評価は,保険会社にとっても重要事項である。本講演では,感染症の発生に起因する,保険会社にとってのリスクのモデル化を行う。感染症の発生を確率過程で記述し,発生後の流行は良く知られたKermack-Mckendrickモデルを用いる。さらに市場リスクを考慮した上でのリスク評価モデルを導入する。
- 大証日経平均先物の日中取引時間間隔の分布に関する研究 / ○朱 麗枚 (筑波大学), 岸本 一男 (筑波大学) [概要]
日本に多く見られる注文駆動型の金融市場においても, それ以外の市場においても,取引間隔の分布は基本的な量である.金融市場取引を含む多くのモデルが,取引時間間隔をポアソン過程に従うとして分析している.本研究では,注文が幾つかの子注文に分割して同時発注されるモデルを提案し,大阪証券取引所での日経平均先物のティックデータを用い,提案するモデルの当てはまりの良さを検討する.
- 日本のクレジット市場における信用リスク変動要因の検証 / ○廣中 純 (野村アセットマネジメント(株)) [概要]
観測可能なファクター[信用イベント(格付の変更)、マクロ経済要因]と観測不可能なファクター(frailtyと称する)を考慮した信用イベントの強度を表すモデルを提案する. モデルのパラメーターの推定結果と、経済指標や信用サイクル[金融機関による信用供与の増減]との関連性を検証する.またモデルを利用し、バーゼルⅢにて導入される資本バッファーの水準を推定するためのフレームワークについて考察する.
▷ 数理ファイナンス(2) [3月7日:15:00-15:40:516](座長:石村 直之)
- A Non-Commutative Version of the Fundamental Theorem of Asset Pricing / ○琉 佳勳 (立命館大学) [概要]
この講演では, 非可換確率論を使って無裁定理論を再定式化したときにも, 数理ファイナンスの第一基本定理と類似した結果得られることについて発表する. 初めに非可換確率論についての紹介をし, 通常の確率論との関係について述べた後, 非可換確率論による無裁定理論の定式化と第一基本定理の類似物について議論する.
- トップダウン型信用リスク評価における確率的細分化の改善法の提案 / ○山中 卓 (三菱UFJトラスト投資工学研究所), 杉原 正顯 (青山学院大学), 中川 秀敏 (一橋大学) [概要]
トップダウン型の信用リスク評価の枠組みの下で,融資ポートフォリオを構成する部分ポートフォリオのリスク評価を行うためのモデルを提案する.具体的には,部分ポートフォリオのリスク寄与分を決める確率的細分化のモデルに,部分ポートフォリオの時間方向のリスク変動を反映させることを試みる.分析例として,業種別ポートフォリオに対するモデル推定結果を示す.
- Optimal Capital Structure with Scale Effects under Spectrally Negative Levy Models / ○山崎 和俊 (関西大学), Surya Budhi (Victoria University of Wellington) [概要]
Leland (1994)によるendogenous defaultモデルはHilberink and Rogers (2002)やKyprianou and Surya (2007)によりレヴィー過程モデルに拡張されている。本研究発表では破産コストとクーポンの支払いによる節税効果が企業のサイズとともに変化することをふまえ、従来のモデルを一般化する。一般のスペクトラリーネガティブな幾何レヴィー過程モデルについて解析解を得る。
▷ 数論アルゴリズムとその応用(1) [3月6日:11:10-12:10:509](座長:青木 美穂)
- 同じZ上の表現を持つ三変数正定値二次形式の数え上げについて / ○富安 亮子 (高エネ研/JSTさきがけ) [概要]
二つの実数値の三変数正定値二次形式が同じ整数環上の表現を持つならば、それらは格子点間距離の集合が一致する二つの三次元格子に対応する。このことから生じる結晶学への応用と、そのような二次形式のclassを徹底探索した結果を紹介する。徹底探索のアルゴリズムは、代数的二次形式論の定理に基づいて得られる。既存研究の結果も俯瞰しつつ、この問題に関してこれまで分かっていることと現在未解決の問題を紹介する。
- On the computation of the dimensions of the cohomology groups of coherent sheaves on a projective space / ○工藤 桃成 (九州大学大学院数理学府) [概要]
体 K 上の r+1 変数多項式環 S = K[X_0,⋯,X_r] を考える。このとき、射影空間 X = P_K^r 上の連接層は、ある有限生成次数付き S 加群 M から定まる。このような加群 M は、次数付き分解とよばれる、自由 S 加群による長さ有限の完全列を持ち、M にある条件を課せば自由加群の Groebner 基底の理論とチェックコホモロジーの理論を用いて各自由加群および各射の表現行列を完全に計算でき、M に付随する連接層の定めるコホモロジー群の K ベクトル空間としての次元を計算できることが知られている。
本講演では、計算機代数システム Magma 上でその計算を行うために、上記の事実の証明をもとに講演者が作成した、(Magma に既存のものとは別の)計算アルゴリズムを紹介する。また、そのアルゴリズムを用いて講演者が実装した関数、および幾つかの計算例も紹介する
- p進拡大体の高速計算法に関する最近の話題 / ○横山 俊一 (九州大学), 吉田 学 (九産大付属九州産業高校) [概要]
与えられた拡大次数と分岐に関する条件を持つような, p進拡大体の同型類を高速に生成するアルゴリズムの開発における最近の進展状況を解説する. 講演者は主にpが奇素数で, かつ完全分岐アーベル拡大の場合に世界最速のアルゴリズムを提案したが, 一般のアーベル拡大の高速生成には拡大次数に関する制約があった. このあたりの進展状況を紹介すると共に, 現時点で出来ることと出来ないこと(未解決問題)を述べる. また, 一般の拡大に対する同型類の個数勘定公式についても言及する予定である.
▷ 数論アルゴリズムとその応用(2) [3月6日:13:30-14:10:509](座長:長尾 孝一)
- A public key cryptosystem based on diophantine equations of degree increasing type / ○奥村 伸也 (九州大学大学院数理学府) [概要]
本講演では、ディオファントス問題を利用した公開鍵暗号を提案する。より正確には、講演者が”degree increasing type”(次数上昇型)と呼んでいるディオファントス方程式の求解困難性を利用している。提案方式は、2009年に秋山・後藤・三宅氏らによって提案された求セクション問題の困難性を利用した代数曲面暗号の類似であるが、これまでに代数曲面暗号に対して提案された攻撃に耐えることができると考えている。
- MQチャレンジ ~多変数多項式暗号の安全性評価~ / ○安田 貴徳 (九州先端科学技術研究所) [概要]
多変数多項式暗号は耐量子暗号の候補であり、その安全性は多変数多項式方程式系の解読問題(MQ問題)の困難性を
基盤としている。よって、与えられた多変数多項式暗号の安全性を正確に見積もるにはこのMQ問題の困難性を正確に
把握する必要がある。このような理由から、講演者は数人の研究者と共にMQ問題の解読コンテストを計画している。
この解読コンテストに使用するMQ問題の作成方法についてお話しする。
▷ 連続体力学の数理(1) [3月6日:15:00-16:20:515](座長:木村 正人)
- 滑り・滑り速度依存摩擦下での定常的破壊伝播速度 / ○鈴木 岳人 (青学大理工) [概要]
滑りと滑り速度に依存する一般的な摩擦則を仮定することで、定常的な破壊伝播速度を解析的に考察した。弾性波速度とのずれが定量的に議論できるようになった。これは後に粘性も含めた摩擦構成則を考慮する際の準備的成果にもなっている。
- 地震により解放されるポテンシャルエネルギーと放射される波動エネルギーの関係 / ○平野 史朗 (筑波大学システム情報系) [概要]
地震時の断層滑りは、地球内部に蓄えられた弾性歪みエネルギーの一部を運動エネルギーに変換する過程である。 本発表ではこれら2つのエネルギーのスペクトルが、パラメタの物理的意味が異なるにも関わらず極めてよく似た式で表現されることを示す。 この関係は、一般に解析困難な滑りの空間分布の短波長不均質の性質を、今まで考えられていたよりも多くの場合に地震波形から推測可能であることを示唆するものである。
- 形状に乱れを含む2次元帯状領域におけるHelmholtz方程式のガイド波問題の境界積分方程式法による解析について / 福田 哲史 (京大工学部), ○三澤 亮太 (京大情報学研究科), 西村 直志 (京大情報学研究科) [概要]
境界上から突出する部分を持つ,斉次Neumann境界条件を満たす2次元帯状領域における
Helmholtz方程式のガイド波問題を高速多重極境界積分方程式法により解く.
帯の境界での斉次Neumann境界条件を満たすGreen関数を用いた帯状領域内部の積分表現と,
基本解を用いた突出部の積分表現を,得られる解の一意性を考慮して連立した境界積分方程式を用いる.
さらに,周波数に関する,ガイド波問題の櫻井-杉浦法を用いた非線形固有値解析も行う.
- スポット溶接の精度評価の逆問題について / 池畠 優 (広島大学), ○伊藤 弘道 (東京理科大学), 笹本 明 (産業技術総合研究所) [概要]
産業界で金属薄板を溶接する際によく用いられるスポット溶接された構造物に対して、溶接の精度評価はその構造物の強度や耐久性に直接影響を及ぼすため重要である。本講演では電気インピーダンストモグラフィーによるスポット溶接部分の再構成の逆問題について、池畠氏が考案した囲い込み法を用いた1組の観測データから再構成する手法を紹介する。
▷ 連続体力学の数理(2) [3月6日:16:30-17:30:515](座長:木村 正人)
- 化学反応を伴うき裂進展モデルのプロトタイプ / ○高石 武史 (広島国際学院大学) [概要]
木村氏と筆者で導出したフェーズフィールドき裂進展モデルに対して,化学反応による脆化プロセスを含む系への適用を試みた.ここでは化学物質の拡散とき裂進展に注目してプロトタイプモデルを作成し,き裂進展に与える影響について数値シミュレーションで調べた.
- (60分講演) やわらかい弾性体の粘着・剥離ダイナミクス / ○山口 哲生 (九大工) [概要]
ゲルやゴム,粘着剤のようなやわらかい弾性体は,硬く平滑な基板の上をすべらせたり,基板から剥がそうとしたりするとき,そのやわらかさのために巨大な変形を引き起こしつつ,しばしばきれいなパターン形成を示す.本講演では,やわらかい弾性体の粘着・剥離ダイナミクスの例として,2つのトピック(粘着剤を基板から剥離させるときに生じるキャビテーションと応力‐ひずみ関係,および,粘着性ゲルのすべり摩擦におけるスティック‐スリップ運動と規則‐不規則分岐)を紹介したい.
▷ 連続体力学の数理(3) [3月7日:09:40-10:40:515](座長:野津 裕史)
- NURBS基底関数を用いたSpace-Time有限要素法による数値解析 / ○乙黒 雄斗 (早稲田大学), 倉石 孝 (早稲田大学), 筒井 雄樹 (早稲田大学), 金井 太郎 (早稲田大学), 服部 均 (早稲田大学), 佐々木 崇史 (早稲田大学), 滝沢 研二 (早稲田大学), Tezduyar Tayfun E. (Rice University) [概要]
NURBS基底関数を用いた有限要素解析は、近年提案された高精度解析手法でありIsogeometric Analysisと呼ばれている。
NURBS基底関数を空間に用いることにより、厳密な幾何学モデルを構築することができ,
従来の多項式近似を用いた有限要素法に比べて、安定的かつリファインメントに優れているなどの利点を持つ。本研究では、時間空間両方向にNURBS基底関数を用いる。これにより動きを含めた厳密なモデルの構築が可能となる。
- NURBSを用いた時間変数の離散化手法の解析 / ○上田 祐暉 (東京大学数理科学研究科), 齊藤 宣一 (東京大学数理科学研究科) [概要]
本講演では, Space-time computation technique with continuous representation in time (ST-C)についての解析結果を報告する. ST-Cは時間方向にNURBSによるL2-projection, またはGalerkin法を適用することで偏微分方程式の近似解を構成するものであり, 近年シミュレーションにおいて盛んに適用されているIsogeometric analysis (IGA)と同様に, NURBSの数値計算への応用の一つである. 今回は, NURBSやIGAに関する簡単な紹介を交えつつ, ST-Cについての安定性, 誤差評価に関して得られた結果を報告する.
- 熱方程式に対するある粒子法の誤差評価 / ○井元 佑介 (九州大学大学院 数理学府), 田上 大助 (九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所) [概要]
SPH法やMPS法に代表される粒子法を一般化した一般化粒子法を熱方程式に適用し, その誤差評価を行った.
講演では, 最大値ノルムによる誤差の収束次数が, 近似微分作用素に用いる重み関数の影響半径に関して, 最大で2次となることを示す.
さらに, 数値実験で得られた誤差の収束次数が数学的に得られた収束次数と一致することを示す.
▷ 連続体力学の数理(4) [3月7日:11:10-12:10:515](座長:野津 裕史)
- Numerical Construction of Theoretical Crack Propagation Based On The Griffith-Francfort-Marigo Energy / ○Ikhsan Armanda (Kanazawa University), Kimura Masato (Kanazawa University), Takaishi Takeshi (Hiroshima Kokusai Gakuin University) [概要]
We construct theoretical solution of straight crack propagation in two dimensional domain. According to the classical Griffith theory, we derive a theoritical evolution of a straight crack by means of the Francfort-Marigo energy [1]. Under an assumption of symmetry, we only consider the upper side of the domain and show the results obtained by this simulation.
- Optimal Shape Design Approach to an Inverse Free Boundary Problem / ○Ahsani Ummi Maharani (Kanazawa University), Kimura Masato (Kanazawa University), Azegami Hideyuki (Nagoya University), Ohtsuka Kohji (Hiroshima Kokusai Gakuin University) [概要]
Recently, optimal shape design is widely used in practice. The main problem is to find an optimal shape which minimizes the cost function. Nevertheless, it has been known that conventional approach of optimal shape design often has numerical instability. A numerical method called traction method have been presented by Hideyuki Azegami to overcome this instability. In this paper, we apply the traction method into a free boundary problem of partial differential equations and compare the numerical result with exact solution which is obtained from a paper from A. Henrot. We begin by defining a least square functional as a cost function. Then shape derivative of the cost function is derived by using Lagrange multiplier method.
- Parametric approach to the spiral motion of 2D curves / ○パウシュ ペトル (明治大学・チェコ工科大学), 矢崎 成俊 (明治大学) [概要]
二つの異なる媒質の間の境界が時々刻々と変形運動する現象は数多くみられる.平面内の現象として近似的にみなす場合,その境界は時間に依存した移動境界線としてとらえられる.現象によっては,異なる移動境界線の衝突,合併などがおこりうる.本講演では,時間発展する平面曲線を直接法でアプローチする立場から,移動境界線の衝突や合併についての数値シミュレーション方法について発表する.
▷ メッシュ生成・CAE [3月6日:09:40-10:40:509](座長:片岡 一朗)
- ボクセルを用いた絶縁距離チェック技術の開発 / ○濱口 崇志 (日立製作所), 小野寺 誠 (日立製作所) [概要]
- 向き付け不可能曲面のZometool近似 / ○坂田 幸士郎 (中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 アルゴリズム理論基礎研究室), 今井 桂子 (中央大学理工学部情報工学科), 森口 昌樹 (中央大学理工学部情報工学科) [概要]
クラインの壺のような向き付け不可能曲面は,3次元空間内では自己交差なしに実現出来ないため,粘土やペーパークラフト,3Dプリンターなどで作ることは難しい.
しかし,Zometoolであれば面同士の自己交差をもつ形状も作成可能である.
入力したメッシュをZometoolで作成可能な形状に近似する研究がなされているが,これらの研究では出力結果に向き付け不可能曲面を扱うことが出来ない.
本研究では,Zimmerらの手法を向き付け不可能曲面も出力出来るように拡張することで,入力したメッシュの位相に忠実な形状を出力する.
- Isomapを用いたB-spline曲面フィッティング / ○キム スンキ (横浜国立大学), 吉田 雄飛 (横浜国立大学), 今井 祐介 (中央大学), 志田 健太朗 (横浜国立大学), 竹澤 正仁 (横浜国立大学), 川原田 寛 (横浜国立大学) [概要]
B-spline 曲面は2 つのパラメータにより3 次
元上の曲面形状を表現方法の一つであり,局所
性,連続性,直感的な操作などの長所を持って
おり,これを拡張したNURBS 曲面は現在多く
の工業製品の開発に利用されている.近年では
3 次元空間上の点群データの取得が容易になっ
たため,点群データからB-spline 曲面を生成す
ることが必要とされている.
点群データに対する曲面フィッティングでは
ベース(初期)曲面を作成する必要があり,通
常メッシュを生成した後それを2 次元に展開す
ることでパラメータ空間での点群の座標を得る.
しかし大規模な点群になるとメッシュ生成のコ
ストおよびメモリの消費が無視できないものと
なる.そこで本研究ではisomap アルゴリズム
を用いた,メッシュを経由しないB-spline 曲面
フィッティング手法を提案する.
▷ 離散システム(1) [3月6日:09:40-11:00:510](座長:宮本 裕一郎)
- マッチング効用関数をもつ買い戻し問題に対するオンラインアルゴリズム / ○福田 俊 (東北大学), 塩浦 昭義 (東北大学) [概要]
買い戻し問題とは,オンライン問題の一種であり,時間の流れと共に到着するアイテムを取捨選択する問題である.
選ぶことの出来るアイテム集合に対しては,要素数制約などの所与の制約があるが,一定の手数料を支払うことによって,
一度選択したアイテムを破棄することが可能である.
このような条件の下で,選択したアイテムの効用の総和から手数料の総和を差し引いた値を最大にすることが目的である.
本研究では,この問題の一般化として,選択したアイテム集合の効用の値が,単なる和でない場合について議論する.
とくに,アイテム集合の効用の値が,二部グラフの最大重みマッチングにより与えられる場合を考え,オンラインアルゴリズムを
提案し,その競合比を解析する.
- Speed Scaling Scheduling Viewed from Submodular Optimization / ○Shioura Akiyoshi (Tohoku University), Shakhlevich Natalia V. (University of Leeds), Strusevich Vitaly A. (University of Greenwich) [概要]
古典的なスケジューリング問題では,各処理機械の処理スピードは一定である.
これに対し,処理スピードが動的に変更可能である speed scaling モデルが
1990年代より盛んに議論されている.
本研究では,1995年に Yao, Demers, Shenker によって扱われた最も基本的な
1機械の spped scaling モデルと劣モジュラ最適化問題の関係を明らかにする.
さらに,同著者によって提案されたアルゴリズムが,藤重(1984)によって提案された
アルゴリズムの特殊ケースと見なせることを示す.
- 劣モジュラ正則化によるスケールフリーネットワークのリンク構造推定 / ○呉 天逸 (東京大学), 平井 広志 (東京大学) [概要]
Defazioら(NIPS’12)は,劣モジュラ関数による構造正則化の理論(Bach NIPS’10)を応用して,スケールフリーネットワークのリンク構造推定問題の構造正則化手法とそのアルゴリズムを提案している. 本研究では,ネットワークの次数分布として対数正規分布を用いたより一般的な定式化と,劣モジュラ関数の分解アルゴリズムを用いた最適化アルゴリズムを提案する.実験結果についても述べる.
- b-マッチング制約つき単調劣モジュラ関数最大化 / ○藤井 海斗 (東京大学) [概要]
b-マッチング制約つき単調劣モジュラ関数最大化問題は,コンテンツ拡散最大化問題などの応用があり,古典的な貪欲法や,2011年にFeldman, Naor, Schwartz, Wardが発表した局所探索法が近似解法として知られている.この問題に対して,本研究では二つのアルゴリズムを提案する.一つは,貪欲法より近似比は少し劣るものの,線形時間で実行できる歩道探索アルゴリズム,もう一つは,乱択化によって局所探索法をp=2の場合に高速化する乱択局所探索法である.
▷ 離散システム(2) [3月6日:11:10-12:30:510](座長:宮本 裕一郎)
- グラフ上の連結性によるグループテスト / 羅 松 (筑波大学), ○松浦 悠司 (筑波大学), 繆 瑩 (筑波大学), 繁野 麻衣子 (筑波大学) [概要]
グラフ上でたかだか1本のエッジが故障しているとき、少ないテスト回数で故障したエッジを見つける問題を考える。このとき各テストは連結部分グラフを構成していなければならない。この問題はグラフ上の連結性を考慮したGroup Testingである。本講演では特定のグラフに対するテストの構成法について考察を与える。
- 安定結婚問題における最適選好マッチングの戦略的操作について / ○平川 瑞樹 (九州大学), 山内 由紀子 (九州大学), 来嶋 秀治 (九州大学), 山下 雅史 (九州大学) [概要]
最適選好マッチングとは、任意のマッチングに人気で負けないマッチングのことである。本発表では、安定結婚問題における最適選好マッチングについて、その戦略的操作可能性を議論する。具体的には、任意の最適選好マッチングに属せていない参加者は、どのような嘘のリストを申請したとしても、依然として任意の最適選好マッチングに属せないことを示す。
- 大規模イベントに向けたバスの運行計画最適化 / ○岡村 彩音 (株式会社 構造計画研究所), 斉藤 努 (株式会社 構造計画研究所), 指尾 健太郎 (株式会社 構造計画研究所), 秋葉 剛史 (株式会社 東芝) [概要]
2020年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。競技会場には1日数十万という人々が出入りすることになるでしょう。これらの人々がターミナルと会場間をスムーズに移動するためには、現状の交通機関だけでは間に合わないと考えられ、既存機関の増強や新しい移動手段の導入が必要となります。
そこで、本研究では各ターミナルとオリンピック会場を繋ぐバスを導入すると想定し、運行ダイヤの決定方法について検討します。
- 群ラベル付きグラフにおける最短路アルゴリズム / 小林 佑輔 (東京大学), ○豊岡 祥 (東京大学) [概要]
群ラベル付きグラフにおけるパスのうち, ラベルが単位元でないものの中で枝数が最小であるものを求める多項式時間乱択アルゴリズムを提案する. この問題はパリティ制約を課した最短路問題の一般化に相当する.
アルゴリズムでは多項式行列のパーマネントの計算という代数的な手法を用いた.
▷ 離散システム(3) [3月6日:13:30-14:50:510](座長:宮本 裕一郎)
- ホーン規則による反マトロイドの表現と教育システム設計への応用 / ○吉川 和 (東京大学), 平井 広志 (東京大学), 牧野 和久 (京都大学) [概要]
本発表では教育システム設計への応用に向けたホーン規則による反マトロイドの表現を取り扱う.ホーン規則は教育システムにおいて問題間の難しさの関係に対応する規則であり,反マトロイドは人間の知識の構造を表すモデルとして現れる.本研究ではこれら二つを対応させる新たな表現を提案する.提案表現は反マトロイドの保持や学習の効率化への貢献が期待される.
- 共正定値計画に基づく最大安定集合問題に対するヒューリスティクス / ○東野 克哉 (東京大学) [概要]
最大安定集合問題はNP困難な組合せ最適化問題の一つであり,共正定値計画問題という別のNP困難な問題として定式化されることがde
Klerk-Pasechnikによって示された.本研究ではこの定式化に基づき,共正定値計画問題に対する近似解法の一つを利用した,最大安定集
合問題に対する新たなヒューリスティクスを与える.
- 行列式複雑度と双多項式ランク / ○矢部 顕大 (東京大学情報理工学系研究科) [概要]
Permanent vs. determinant 問題における目標は,permanent の行列式複雑度の超多項式下界を与えることである.現在最良の下界は行列のサイズ d に対して d^2/2 で,これは Mignon と Ressayre によって示された.この研究では,双多項式ランクという概念を定め,性質を明らかにし,その結果実数体上で先行研究の下界を (d-1)^2+1 に改善する.
- 集合関数のハイパーグラフカット表現 / ○山口 勇太郎 (東京大学) [概要]
集合に対し値を定める集合関数が対称であるとは,常に補集合に対して同じ値を定めることをいう.
対称な集合関数の代表的な例として,無向グラフ,および,その一般化であるハイパーグラフのカット関数が挙げられる.
本発表では,対称な集合関数のハイパーグラフのカット関数としての実現可能性について議論する.
▷ 産業における応用数理 [3月6日:16:30-17:30:509](座長:二村 保徳)
- Voxel法による3次元半導体形状シミュレーションと容量計算における計算技法の紹介 / ○武藤 雅基 (NTTデータ数理システム) [概要]
近年の半導体やMEMSの形状の3次元化・複雑化に伴い、半導体形状シミュレーションもVoxel法を用いた3次元手法が用いられるようになってきている。
本講演では、Voxel法による半導体形状シミュレーションと、その応用である有限体積法を用いた容量計算の事例を紹介し、
周辺技術である行列ソルバーや並列計算、GPGPUなどの計算技法についても解説をおこなう。
- 画像処理における機械学習 / ○永田 毅 (みずほ情報総研) [概要]
機械部品の欠陥検出、細胞画像からの異常細胞の検出、顔画像の加齢化シミュレーション、超解像等、画像処理における機械学習の応用例について具体的に論じる。
- ものづくり企業に役立つ応用数理手法の研究会の活動紹介 / ○井手 貴範 (アイシン・エィ・ダブリュ株式会社) [概要]
シミュレーション技術を活用してきた異業種の企業人がコアメンバーとなり,製品設計・製造プロセスに関して現在抱えている課題解決を目指しています。シミュレーション技術とデータ科学の両方を融合し、ものづくりの現場で活用していくための研究会の活動を紹介させて頂きます.